C社は中規模の建設会社で、同時に3〜4現場が走る月が続くと、監督の終業後タスクが山積みになります。日報の作成、翌日の段取り共有、元請・施主向けの週次レポートづくり。どれも“手で整える仕事”が多く、写真整理と記憶を頼りにした文章起こしがボトルネックでした。初回の90分スポット相談で業務導線を可視化すると、日報は平均35分、週次レポートは120分以上。工程会議の前には、写真の抜き出しや出来形の説明文づくりにさらに時間を取られていました。
私が提案したのは、C社の既存運用を崩さない“半自動”です。Googleドライブに「物件コード_階_日付」の命名規則でフォルダを自動生成し、スマホから投げ込まれた写真を大まかに「躯体/内装/設備/外構」に振り分けます。監督は撮影のたびに一言メモを付けるだけ。Apps Scriptが写真名とメモ、時刻、位置情報を拾い、スプレッドシートに「作業内容・出来形・数量候補・注意点・翌日段取り案」の5項目で整列します。ここでGPTが“下書き”を生成し、数量はm・㎡・本数の推定をハイライト、危険パトの指摘は人の確認前提で目立たせる設計にしました。
週次の対外説明も同じ通路で軽くしました。指定フォルダの写真から“今週のハイライト3枚”を自動ピックし、出来形の要旨と翌週のクリティカルパスを短い文章にまとめて、PPTのテンプレに自動流し込みます。工程表は既存のスプレッドシート版を前提に、出来形の進み具合から3日先までの“ラフ見通し”を提案するだけに留め、確定は常に監督が行うルールにしました。
結果は初週から数字に現れました。日報は35分から9分へ、週次レポートは120分から25分へ短縮。写真整理にかける時間はゼロになり、工程会議の準備は“下書きを整える作業”に変わりました。資材手配の漏れに直結していた「翌日段取りの伝達抜け」は導入前月比で36%減り、2現場で軽微な遅延を4日分取り戻せました。出来形の説明が写真とひとことで統一されたことで、協力会社との齟齬も減り、再手配ややり直しの発生率は体感で目に見えて下がりました。現場の声としては、「文章トーンが揃うので、元請との週次共有が楽」「危険パトの注意喚起が“要注意”に倒れて出てくるので、最後に確認するだけでよい」という反応が多かったです。
情報保護と品質管理の線引きは最初から徹底しました。住所や個人名はトークナイズしてモデルに渡し、学習利用はオフ。費用負担や契約条項に触れる文面は必ず“要注意”に倒して、人の最終確認を必須化。私は初動2週間、毎夕の短いレビューで辞書とプロンプトを微修正し、C社らしい言い回しや数量推定のクセを学習させました。結果として、監督が判断する“芯”はそのままに、整える・並べる・書き出す部分を機械に任せる体制に置き換わった感覚です。
私の所見を短く。C社の成功は、一次情報である「写真+一言メモ」を起点に据え直したこと、既存のドライブ運用に寄り添ってゼロ移行にしたこと、そしてAIの役割を“下書き”に限定して人が最終決定する設計を守ったことの三点に尽きます。実装は私の「現場写真→進捗レポート要約スターター」を土台に、2時間のミニ研修で運用を定着。要件確定から7営業日で初期稼働、2週で安定運用に到達しました。もし、あなたの現場でも「日報が後ろ倒し」「写真整理が負担」「週次資料が重い」と感じているなら、入り口は同じで十分です。まずは90分で“いま詰まっている一箇所”を特定し、翌週には自社流のドラフトが出る状態を一緒に作りましょう。相談ベースで進められるので、現場を止めずに始められます。