ここで紹介するのは、私たちが提供している支援内容をベースに「中堅建設会社で起きやすい課題」と「現実的な改善プロセス」を組み合わせて再現したモデルケースです。特定企業の実例を写したものではなく、盗用にならない形でゼロから組み立てたオリジナルの成功事例としてお読みください。
C社は、同時に複数現場を回す中堅の建設会社です。元請・下請の両方を手がけ、現場監督は工程・安全・協力会社調整・写真管理・日報週報までを抱えていました。課題は典型的で、写真は撮っているのに整理が追いつかず、日報は夕方以降にまとめ書きになり、週次報告は週末に“思い出しながら”作る状態。結果として、報告の粒度が担当者ごとにばらつき、元請・施主側からの追加確認が増える。さらに「誰が・どこで・何を・どの順で」が言語化されていないため、協力会社への段取り共有も遅れがちでした。現場力はあるのに、情報の整え方で損をしている。私はまずそこに焦点を当てました。
私たちが最初の打ち合わせでやったのは、AIツールの話ではなく、情報の流れを一本化することです。C社にとって“現場の一次情報”は写真と短いメモです。この入口が整えば、日報・安全記録・週次報告・工程会議資料まで、同じ素材から自然に作れます。逆に入口が乱れていると、どれだけ良いテンプレートを作っても定着しません。そこでC社では、既存の運用を壊さない前提で、Googleドライブとスプレッドシートを中心に「半自動の通路」を作りました。
具体的には、写真の保存ルールを最初に決め切りました。現場コード、日付、エリア、工種がブレない命名規則を定義し、スマホで撮ってドライブに入れた瞬間に、フォルダが自動で整うようにします。監督がやることは、撮影時に一言メモを残すだけ。あとはApps Scriptが写真ファイル名とメモを拾い、スプレッドシートに「作業内容」「出来形」「使用材料」「注意点」「翌日の段取り」の下書きを自動で並べます。GPTは文章を整える役に徹し、判断が必要な箇所は“要確認”として目立つ形で残します。ここを曖昧にしないのが、現場が安心して使える設計の肝です。
次に、週次報告の重さを軽くしました。C社の週次報告は、写真選定と説明文作成に時間が吸われていました。そこで、日々の写真とメモから「今週の要点」を自動で要約し、テンプレートに流し込める形に整えました。過剰に凝った資料にしない代わりに、毎週一定品質で出ることを優先します。施主・元請が知りたいのは、出来形の根拠、次工程の見通し、リスクの芽です。その3点を外さない構成に固定し、文章の言い回しもC社のトーンに寄せて統一しました。
導入の進め方も、いきなり全現場ではなく「1現場で短期に固める」方式です。初週は運用ルールの擦り合わせと、テンプレートと辞書の微調整。2週目に、監督と事務の役割分担を決め、現場が無理なく回る形に落とし込みます。ここで私たちが重視したのは、AIを使うこと自体ではなく、現場の行動が増えないことです。入力が増えると必ず破綻します。撮影と一言メモだけを徹底し、整形・要約・体裁は機械側が引き受ける。C社ではこの割り切りが効きました。
モデルケースとしての成果イメージを示すと、日報は「ゼロから書く」から「下書きを整える」に変わるため、作成負担は体感で大きく下がります。例えば、従来30〜40分かかっていた日報が10〜15分程度まで短縮される、といった改善が現実的に狙えます。週次報告も同様で、120分前後を要していた作業が30分程度に寄る、といった形です。数値は会社の現場数や報告要件で上下しますが、ポイントは“思い出し作業”が消えることです。写真とメモが先に整っているので、報告に必要な根拠がすでに揃っている状態になります。
副次効果も大きいです。段取り共有が早まり、協力会社への指示が曖昧になりにくい。工程会議では、口頭の説明よりも写真と短い要約が先にあるため、論点がずれにくい。報告のトーンが揃うことで、元請・施主側の追加確認が減り、結果として監督の中断が減ります。私はここが、建設会社のAI活用で一番“効く”部分だと見ています。作業時間の短縮だけでなく、現場の集中を守れるからです。
もちろん、情報の扱いには線を引きました。個人情報や特定性の高い情報は入力段階で扱いを分け、AIに渡す情報は必要最小限にする。契約や費用、責任分界に触れる文言は自動確定させず、必ず人が最終確認する。安全に関わる指摘は強めに“要注意”へ倒し、見落としを防ぐ。その代わり、現場が安心して継続できる運用にします。中堅規模で横展開するには、このガバナンスが欠かせません。
私たちの所見を少しだけ述べると、中堅建設会社がAIで成果を出す鍵は、最新ツールの導入ではなく「入口の標準化」と「下書きを作る通路の設計」です。写真と一言メモを会社の資産として回せる形にすると、日報、週報、工程会議、引き継ぎが連鎖的に軽くなります。現場の判断はそのままに、整える作業だけを軽くする。私はそこに一貫して価値があると考えています。
もし今、日報が後ろ倒しになり、週次資料が重く、写真整理が属人化しているなら、原因は人の頑張り不足ではなく、入口と通路が未整備なだけかもしれません。まずは短時間で現状を分解し、“いま詰まっている一箇所”を特定して、そこから整えましょう。相談ベースで構いません。翌週から回り始める形に落とし込むところまで、私たちが伴走します。
