「提案が遅い会社」から脱却。B社(中堅リフォーム会社)が写真とメモ起点のAI運用で、提案スピードと現場共有を同時に底上げした話

ここで紹介するのは、私が普段提供している支援内容をもとに組み立てたモデルケースです。特定の企業の実例を転用したものではなく、中堅リフォーム会社で起きがちな課題と改善プロセスを、現実的に再現したオリジナルの成功事例としてまとめています。

B社は、複数の現場が同時進行する中堅リフォーム会社です。受注経路は紹介とWebが半々で、現調から提案までのスピードが競争力の要でした。しかし、社内ではある“詰まり”が慢性化していました。現場写真は撮っているのに、誰が見ても分かる形に整理されず、提案書も日報も「担当者の記憶」と「各自の文章力」に依存していたのです。結果として、提案が遅れる、内容にムラが出る、現場共有が翌日以降に持ち越される。社長は「うちの強みは現場力なのに、書類で負けている」と感じていました。

私が最初に行ったのは、派手なAI導入の話ではありませんでした。90分の打ち合わせで、現場から見積、提案、工事中の共有、完了後の報告までを一本道として眺め、「今すぐ効く一箇所」を特定しました。結論は明快で、B社の場合は“写真とメモの入口が整っていない”ことが、すべての後工程を重くしていました。ここが整えば、見積の説明文も提案書の骨子も、日報も週報も、同じ素材から自然に作れるようになります。

そこでB社では、既存の運用を壊さずに“半自動の通路”を作りました。中心はGoogleドライブとスプレッドシートです。物件名、工事種別、日付、部位がブレない命名規則を決め、写真が入った瞬間にフォルダが自然に整う状態を作ります。監督は撮影時に一言メモを残すだけでよい。あとは、写真とメモからAIが「作業内容」「使用材料」「注意点」「次の段取り」の下書きを起こし、スプレッドシートに並べます。重要なのは、AIが勝手に決めない設計にすることです。判断が必要な箇所は目立つ形で残し、人が確定する前提で運用します。現場が怖がらない形にするのが、定着の分かれ道です。

同じ素材をそのまま提案側にも流しました。B社の提案が遅れていた理由は、説明文を毎回ゼロから書いていたこと、そして「ビフォーの状況」「なぜこの工法か」「工期と注意点」を整えるのに時間がかかっていたことでした。そこで、提案書のテンプレートを先に整備し、写真とメモから骨子、本文、表現の体裁までを段階的に下書きする流れにしました。クロス、床、水回り、外壁、部分補修など、B社がよく扱う工種については“言い回しの基準”を短い辞書として用意し、誰が作っても説明の質が揃うようにしています。ここでの狙いは、文章が上手くなることではなく、会社の提案品質が標準化されることです。

運用開始後、B社の変化は数字よりも先に現場の感覚として出ました。まず、監督が帰社後に写真整理に追われなくなり、日報が「思い出し作業」から「下書きを整える作業」に変わりました。提案側では、資料のたたき台が早く出るため、社長が確認すべきポイントが明確になり、戻しが減りました。結果として、現調から提案までのスピードが上がり、忙しい週でも“出すべきものが出る”状態に近づきます。社内計測の目安としては、提案書の下書き作成が従来の半分以下の時間感になり、日報も短時間で一定品質に揃うようになります。重要なのは、スピードが上がっても雑にならないことです。説明の型があるので、むしろ丁寧に見える。ここが受注率に効いてきます。

情報の扱いも最初に線を引きました。顧客の個人情報や住所などは、AIに渡す前段で扱いを分け、必要最小限にする。契約や保証、費用負担に関わる表現は、自動で確定させず必ず人が最終確認する。B社のように中堅規模になるほど、現場が安心して使える設計が不可欠です。私はこの点を“仕組みの要件”として最初に合意し、現場に無理をさせない導入に徹しました。

私の所見を少しだけ述べると、B社のような中堅リフォーム会社がAIで成果を出す鍵は、最新ツールの導入ではありません。入口の標準化と、下書きを作る通路の設計です。現場の一次情報である写真とメモを、会社の資産として回せる形にすると、見積や提案、報告のスピードと品質が連鎖的に上がります。現場力はそのままに、整える作業だけを軽くする。私はそこに価値があると考えています。

もし今、あなたの会社で「提案が遅れる」「担当者で文章の質が変わる」「現場共有が後ろ倒しになる」という症状が出ているなら、原因は人の能力ではなく、入口と通路が未整備なだけかもしれません。まずは現状を短時間で分解し、“一箇所”から整えるところから始められます。相談ベースで構いません。B社のように、既存のやり方を大きく変えずに、翌週から回り始める設計を一緒に作ります。