建設業の資材在庫管理|AI・DXで数量と引当を確認
「倉庫にはあるはず」と言われて探したら見つからない。見つかっても、別の工事で使う予定だった。建設業の資材在庫管理では、残数を記録するだけでなく、どこにあり、どの工事に回せるかまで分かることが大切です。
最初にそろえたいのは、現物の数量、工事用に確保した数量、使用を保留している数量です。これらを混ぜたまま一つの残数にすると、追加購入が必要なのか、社内で移動すれば足りるのかを判断しにくくなります。
DXでは、資材の移動と数え方を共有できるようにします。AIは納品書や作業メモの読み取りを補助できますが、実物の数や使用に適した状態かどうかは人が確認します。この記事では、自社で保有する工事用の部材・消耗品を中心に、少人数でも始めやすい運用を説明します。
建設業の資材在庫管理は「使える量」を分けるところから
在庫には、倉庫に置いてある物だけでなく、車両に積んだ物、現場へ持ち込んだ物もあります。会社として所有していても、すぐ別の現場へ回せるとは限りません。
まず、数量の意味を言葉で決めます。現物を数えて確認した量、台帳上の量、工事のために取り置いた量は、それぞれ異なるものです。
「引当」とは、まだ出庫していない在庫を、特定の用途に使う予定として確保することです。現物が棚に残っていても、引当済みなら別の工事へ勝手に回さないようにします。
さらに、破損が疑われる、表示が読めない、保管状態が不明など、確認が終わるまで使わない物を分けます。台帳では数量があっても、使用可能な物として数えない運用です。
| 数量の区分 | 意味と確認する点 |
|---|---|
| 記録上の在庫 | 入出庫などの記録から計算した数量 |
| 現物の数量 | 指定した場所で、実際に数えた数量 |
| 工事への引当 | 他の用途に回さないよう確保した数量 |
| 使用保留 | 状態や条件を確認するまで使わない数量 |
| 新たに割り当てられる量 | 重なりなく区分した在庫から、引当と使用保留を除いた量 |
最後の計算ができるのは、同じ品目、単位、保管場所の範囲がそろい、同じ物を二重に差し引いていない場合です。現場へ出した物を倉庫の引当にも残していると、誤った数字になります。
何を自社の在庫として管理するかも確認します。顧客が用意した部材や預かり品を、自社の自由に使える資材へ混ぜないようにしてください。
品目名だけでまとめず、規格と数える単位を固定する
「ビス」「継手」「シーリング材」という名前だけでは、現場で必要な物を特定できません。同じ呼び方でも、寸法、材質、色、用途、メーカーや品番が違えば、別の物として管理する必要があります。
品目ごとに短い管理番号を付け、品名、規格、品番、数える単位、保管場所を結び付けます。写真は見分ける補助になりますが、写真だけで規格を確定しないようにします。
特に迷いやすいのは、箱と個数の混在です。納品時は箱で届き、現場では本や個で使う物は、どの単位で残数を持つかを決めます。入り数が異なる商品を同じ換算にしないことも大切です。
開封済みの箱を「一箱」と記録すると、未開封の一箱と同じ量に見えてしまいます。開封後の残数を別に数えるのか、開封済みとして区分し、出庫時に確認するのかを、実際の使用頻度から決めましょう。
長さや重量で管理する物も、測り方と記録する精度を共有します。実測していない数量を細かい桁で表示しても、正確になるわけではありません。残量が概算なら概算と分かるようにし、出庫を確定する前に必要な確認をします。
品番の似た資材をAIで読み取る場合は、途中の文字や記号まで照合します。読み取れなかった箇所を、似た製品名で自動補完しないことが重要です。
倉庫・車両・現場の間を動くたびに、所在をつなぐ
資材を探すとき、「会社のどこかにある」だけでは役立ちません。倉庫の棚、車両、現場内の保管場所など、担当者がたどり着ける場所まで記録します。
保管場所には番号や短い名称を付けます。担当者が変わっても同じ場所を示せるようにし、棚の呼び方を人によって変えないようにします。
QRコードを使うなら、品目を開くものと、保管場所を開くものを区別します。読み取り後にどの作業ができるかが分かれば、入力画面を探す負担を減らせます。ただし、読み取っただけで移動や出庫が完了する設計にはせず、数量と移動先を確認して記録します。
たとえば、倉庫から現場の保管庫へ資材を移した場合、会社全体の数量は変わらなくても、場所別の数量は変わります。移動元から減らす記録と、移動先で受け取った記録がつながっているかを確認してください。
移動中の物を、倉庫にも現場にもあるように表示しない工夫も必要です。受け取りが翌日になるなら、「移動中」の状態を持つ方法があります。入力の遅れが多い場合は、通知を増やす前に、誰がどの時点で記録するかを見直します。

入荷前の注文残も、現物とは別に扱います。届く予定の物をすでに倉庫にあるように数えないでください。納期と現場受領の運用は、資材発注から納品確認までの整理と合わせて考えると分担が明確になります。
引当と出庫を分けると、工事間の取り合いを確認しやすい
同じ資材を複数の工事で使う場合は、引当の開始と解除のルールを決めます。担当者のメモだけで取り置きすると、棚の在庫を見た別の人が持ち出してしまうことがあります。
以下は、数量の考え方を説明するための架空の例です。特定の会社の実績ではありません。
ある継手を、倉庫で60個確認したとします。そのうち35個はA工事へ引き当て、別の5個は状態確認のため使用を保留しています。この区分が重なっていなければ、新たな用途へ割り当てられる量は20個です。
そこでB工事が20個必要になれば、利用できる規格と状態を担当者が確かめたうえで、20個をB工事へ引き当てます。A工事用の35個と、保留中の5個を回す判断はしていません。
A工事へ35個を実際に出庫するときは、倉庫の在庫を減らし、同じ35個の引当を解消します。出庫済みなのに引当も残すと、使える量を二重に減らしてしまいます。
数字が合っていても、引当した品目や場所が違えば現場では使えません。数量の計算と、適切な資材を届ける確認は、両方必要です。

工事が中止・延期になった場合も、引当をいつ見直すかを決めます。自動で全部解除すると、後日必要になった際に足りなくなることがあります。工事の責任者が、継続する取り置きと解除する分を確認します。
AIの読み取りは、数量を確定する前の補助として使う
資材管理でAIを使うなら、まず紙や文章から情報を転記する場面を選びます。納品書の品名・数量を取り出す、音声メモから持ち出した資材の候補をまとめる、といった使い方です。
読み取った結果には、確認元の資料、該当する行や箇所、確認待ちの項目を付けます。数量が読めても、単位が箱なのか個なのかで意味が変わるため、セットで照合します。
納品書の数量と受け取った実物の数量も、別に確認します。書類の読み取りが正しくても、不足や別商品の混入があれば受入数は変わります。AIの出力を、そのまま入庫実績にはしない運用にします。
写真の利用も同様です。棚の写真から品目の候補を探す用途は検討できますが、奥に隠れた箱、開封済みの残量、外見で分からない品質まで正しく判定できるとは限りません。実物の数え直しや担当者への確認を省かないでください。
AIへ依頼する際は、「不明な規格を補わない」「記載のない残量を推測しない」「出庫を確定しない」といった境界を明確にします。最終的な入出庫操作は、確認した人と日時が残る仕組みにします。
資材の名称や数量を外部サービスへ渡すときは、契約上の制約と社内の利用ルールを確認します。顧客名、現場住所、仕入条件など、読み取りに不要な情報は外してください。
棚卸の差は、数値を合わせる前に理由を調べる
棚卸とは、決めた時点で実物を確かめ、記録と照合することです。差が出たら、台帳を書き換えて終わらせず、何が起きたのかを残します。
まず、同じ品目と単位を数えているか、別の棚や車両へ移していないかを確認します。出庫したが未入力、返却したが未受入、開封済みの箱を未開封として数えた、といった可能性を順番に調べます。
数えた時点の違いにも注意します。確認中に持ち出しがあれば、台帳と現物がずれることがあります。数える間の出庫をどう記録するか、先に担当者と合わせておきましょう。
修正が必要な場合は、修正前の数量、確認した数量、理由、承認した人を残します。理由が分からない差を、使ったことや紛失と決めつけないようにします。
戻ってきた資材は、未使用だから必ず再利用できるとは限りません。製品の保管条件、使用期限、現場の仕様、状態を担当者が確認します。使用可否が決まらない物は、一般の在庫と分けて置きます。解体材や廃棄物の扱い、会計上の在庫評価は、この記事の管理数量とは別の専門的な確認が必要です。
繰り返し差が出るなら、人に注意を求めるだけでなく、記録するタイミングや画面を変える余地を探します。現場へ持ち出した後に事務所でまとめて入力する方法が合っていないことも考えられます。
ツールは、数え方と実際の動きを試して選ぶ
共有の表で始める場合は、品目一覧と入出庫履歴を分ける方法があります。現在の残数だけを手入力で上書きすると、なぜ増減したのかを後から調べられません。
製品を検討する場合も、保管場所、入出庫、移動、棚卸、工事への引当が、自社の運用でどうつながるかを確かめます。機能名が載っていても、同じ意味とは限りません。
たとえば建設ドットウェブの在庫管理機能には、倉庫間の移動や棚卸時の調整などが紹介されています。Tanaの工務店・建設向け案内では、物の保管場所を分けた記録や、数量更新の使い方が示されています。対応する製品・プランと実際の操作は、選定時に確認してください。
デモでは、自社で起こりそうな例を試しましょう。開封した一箱から一部を使う、別現場へ移す、工事の延期で引当を見直す、納品書と実物が違う、といった例です。正常な入庫だけを見て決めないことが大切です。
繰り返し使う工具の貸出・点検と、使えば減る資材の管理では必要な記録が違います。両方を同じ画面へ押し込む前に、工具の貸出・返却を管理する方法との分担も確認します。
通信が不安定な場所で入力する場合は、未送信の記録が分かるか、同じ操作の再送で二重計上しないかも見ます。紙の控えを使うなら、後から誰が反映し、反映済みと判断するかまで決めます。
小さく始めて、探す時間と差異の理由を確認する
最初は、重複購入や探し物が起きている品目群と保管場所に絞ります。全資材を一度に登録するより、数え方、入出庫、引当の運用が続くかを試す方が、次の判断に役立ちます。
試行前に現物を確かめ、開始時点の記録を作ります。その後は、受入、持ち出し、場所の移動、返却、数え直しを一通り扱います。管理者だけでなく、実際に資材を動かす人が入力できるかを見てください。
評価する指標には、探し物にかかった時間、重複購入が判明した件数、出庫前に不足が分かった件数、実物との差、入力や照合の所要時間があります。指標を増やしすぎず、今困っている問題に合うものを選びます。
差が減ったかを見るときは、対象品目と数え方をそろえます。記録する人や単位が変わっただけなら、単純な改善率にはできません。AIを使う場合も、読み取り後の確認や訂正を含めて負担を測ります。
棚に物があることと、その工事に使えること。この違いが共有できるようになれば、次にどの記録を整えるかが見えてきます。発注を自動化する前に、使える量の根拠を確かめられる状態を目指しましょう。
Luzetraへの相談窓口では、現在の在庫表や入出庫の流れをもとに、整理したい業務をお知らせください。まず一つの品目と保管場所を例にすると、必要な記録と人の確認点を具体的に考えやすくなります。

約25年間、建設・リフォーム業界に在籍。不動産業界にも精通。現在は、これまでの経験と知識を活かしつつAIを用いて業界の活性化に取り組んでいる。
