リフォームのクレーム分析|AIで分類し再発防止へつなぐ
リフォームのクレーム分析を、毎月の件数報告で終わらせていないでしょうか。お客様への対応は終わったのに、似た指摘が別の現場で起きる。こうした状況では、件数を集める先にある「どこを直すか」の判断を見直したいところです。
リフォームのクレーム分析では、お客様の申出、現場で確かめた事実、確認された原因、実施する対策を分けて扱います。DXで元の記録へ戻れるようにし、AIは分類候補や類似記録を探すために使います。原因と是正策は、人が資料や現場を確認して決めます。
本記事の対象は、既に受け付けた苦情や不具合の記録を、社内の改善へつなぐ工程です。緊急対応や個別のお客様への連絡を、月次の分析まで待たせるものではありません。本文中のケースと数値は、考え方を示すための説明例です。
リフォームのクレーム分析で決めたいのは、次の工事で変えること
分析資料を作るときは、最初に使う場面を決めます。例えば、完了検査の確認箇所を変える、日程変更の連絡手順を変える、契約前の説明資料を見直す、といった判断です。
分類の細かさも、その判断に合わせます。入力欄を増やしても、集計後に誰も使わなければ、現場の記録負担だけが増えます。一方で、すべてを「施工不良」にまとめると、工程や確認方法のどこを調べるかが分かりません。
一件の苦情に応じる仕事と、複数件から改善を考える仕事には、それぞれ担当と確認時点を持たせます。日々の受付から修理完了までの流れは、リフォーム会社のアフター対応管理で扱っています。分析用に整理する間も、必要な個別対応は進めてください。
受付の回数と、調べる問題の数を分ける
同じお客様から、電話、メール、再度の電話が届いた場合を考えます。連絡の回数をすべてクレーム件数へ足すと、一つの問題が三件に見えます。逆に、一回の連絡で複数箇所の問題が伝えられることもあります。
整理の基礎として、元の受付を特定する番号、対象工事、論点、追加連絡の関係を持たせます。「工事について苦情があった件数」「解決すべき論点数」「やり取りした回数」は別の情報です。どれを集計した表かを明示しましょう。
過去の記録を統合するときも、似た名前や同じ住所というだけで自動的に一件へまとめません。関係が確かめられないものは確認対象として残し、統合した理由を記録します。原文の削除によって重複をなくそうとしないことが大切です。
分析へ渡す情報は、業務上必要な範囲に絞ります。氏名、連絡先、住居の詳しい写真などは、閲覧する人と保存場所を分ける方法があります。番号に置き換えても元の人へ戻れるなら、完全な匿名情報とは考えず、適切に管理します。
お客様の申出と、確認できた原因を別々に残す

例えば、お客様が「交換した扉が使いにくい」と話した時点では、その原因は確定していません。取付け、製品、使い方の説明、期待した仕様との違いなど、確認する方向が複数あります。
受付の言葉をすぐに施工の責任へ置き換えると、その後の集計も偏ります。最初の申出は原文に戻れる形で残し、現地調査や資料で確かめた結果を別の欄へ追加します。原因が分からない状態にも、名前を付けて残せるようにします。
| 記録の段階 | 残す内容 | 決めつけないこと |
|---|---|---|
| 申出 | お客様が困った場面 | 原因や責任 |
| 調査 | 観察した状態・資料 | 未確認の経緯 |
| 判断 | 確認結果と根拠 | 他の工事への一般化 |
分類には、発生した部位、工事の工程、指摘内容、確認状態など、使い道が違う軸があります。一つの分類欄へ全部を押し込めるより、必要な軸だけを分けます。最初は既存の記録で確かめられる項目から始め、分からない欄を推測で埋めません。
分類の定義も短く書いて残します。「連絡の問題」に何を含めるかが人ごとに違えば、件数の比較ができません。定義を変えたら版と日付を付け、以前の集計との違いを説明できるようにします。
AIの分類候補を、元の文章と並べて点検する
AIには、会社が利用を認めた記録から、論点と分類の候補を抽出させる方法があります。入力は対象の記録と分類の定義に限定し、出力には記録番号、候補、根拠となった箇所、未確認事項を含めます。
例えば「扉の動きは直ったが、日程の説明が分かりにくかった」という記録では、修理の状況と説明の指摘を区別する必要があります。一つのラベルだけで全体を評価すると、残った課題が隠れます。
AIが付けた原因らしい言葉にも注意します。「調整後に改善した」という結果だけで、初期の施工方法が原因だったと確定できるとは限りません。担当者は、AIが申出や対応結果を、原因へ勝手に変換していないかを点検します。
試行では、短い記録、否定表現、複数の問題が混じる記録、原因不明、途中経過だけの記録を含めます。分類を直した数だけでなく、重要な指摘を取り落としたか、存在しない事実を足したかも見ます。
AIへの入力を増やすほど良いとは限りません。社外のサービスを利用する場合は、取引や個人の情報を渡してよいか、保存や再利用の条件、閲覧範囲を確認します。初期確認には、実在のお客様を特定できない見本を使う方法があります。
類似する記録から、原因を調べる仮説を作る
分類が揃うと、同じ部位や同じ工程の記録を探しやすくなります。ただし、似た表現が並んだことは、原因まで同じである証拠ではありません。工法、製品、施工条件、発生時点、確認資料を見比べます。
例えば、日程に関する指摘が複数あれば、変更自体が問題だったのか、決定から連絡までの間隔だったのか、説明した予定が異なっていたのかを調べます。対策はそれぞれ変わります。AIには共通しそうな点を候補として出させても、その候補をそのまま会議の結論にはしません。
原因を確認できないときは、仮説、必要な資料、確認する人を記録します。記録が不足しているなら、次の同種工事で何を残すかを決めることも改善になります。「原因不明」があることを隠さず、調査を進める材料にしましょう。
公表資料を使う際も、相談の傾向と実際の発生率は区別します。住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住宅相談統計年報2026は、2025年度の相談などを集計した資料です。相談窓口へ寄せられた情報であり、国内の工事すべてを調べた不具合率や、自社の原因を示すデータではありません。外部の傾向は、自社で調べる観点を補うために使います。
対策は、発生を防ぐ変更と見逃しを減らす変更を考える

原因が分かったら、「注意する」という言葉で終わらせず、変える作業を具体化します。例えば、誤った資料で作業したなら、作業開始時に参照する版を確認する手順や、差替えを伝える方法を見直します。
同時に、その問題が起きた場合に、お客様へ引き渡す前に発見できるかも考えます。発生を抑える手順と、見逃しを減らす確認は、役割が違います。大阪産業創造館の品質クレームへの対応に関する解説でも、原因への対策と、その効果を観察する考え方が示されています。自社の工事条件へ置き換えて検討してください。
対策の記録には、対象となる工程、具体的な変更、実施担当、開始する条件、確認する方法を残します。検査項目を変えるなら、リフォーム工事の完了検査の記録と接続できます。AIで作った改善案を、そのまま施工基準に採用するのではなく、技術面と運用面を責任者が確かめます。
一度に多くの手順を変えると、現場で実行しにくくなり、どの変更が役立ったかも分かりにくくなります。重大な問題への必要な対応を優先したうえで、確認可能な範囲から改善を追いましょう。
件数の増減には、対象工事と記録条件を添える
説明例として、ある月に対象工事が20件で苦情のあった工事が2件、別の月は対象工事が40件で3件だった場合を考えます。単純な件数では増えていますが、対象工事数も違います。
この例で、同じ期間の対象工事について同じ基準で観測できているなら、割合はそれぞれ10%と7.5%です。ただし、受付が増えた理由や対策の効果は、これだけでは分かりません。工事の内容や経過期間、受付経路の変化も確認する必要があります。
過去に完了した工事の指摘が今月届くこともあります。その月の受付件数を、その月に完成した工事件数で割ると、対象が一致しない場合があります。工事単位の発生を見るのか、受付窓口の負荷を見るのかを先に決め、期間の意味を揃えます。
受付の仕組みを改善して声が届きやすくなれば、記録件数が増えることも考えられます。数を減らす評価だけにすると、記録を避ける方向へ働くおそれがあります。申出を受け止められたか、必要な対応を進めたか、同じ問題の再発を確認したかを併せて見ましょう。
月次の会議では、一つの対策を次の確認まで追う
分析を運用にするには、集計表を配るだけでなく、前回決めたことの実施状況を確かめます。変更は行われたか、対象となる工事が実際にあったか、現場で無理なく続けられたかを確認します。
対象の工事がまだなければ、再発がないことを成功とは扱いません。十分に観察できる時点を次の確認条件として残します。問題が再び起きた場合は、手順が実施されなかったのか、実施しても防げなかったのかを分けて調べます。
お客様の評価を広く聞く仕組みは、リフォームの顧客アンケートとも連携できます。ただし、苦情として受け付けた記録とアンケートの回答は、集め方が違います。同じ指標に混ぜる場合は、重複と集計条件を確認してください。
次の会議に向けて、最近の苦情一件を選び、申出、調査結果、原因の確からしさ、変更した作業、次に確かめる場面を並べてみませんか。空欄がある場所が、次の記録や確認を整える手がかりになります。
Luzetraへの苦情記録の整理と改善会議の相談では、現在の報告書を生かしながら、AIの分類補助と人の判断を組み合わせる進め方を検討できます。きれいな集計表を作る先に、現場で変える行動までつなげていきましょう。

約25年間、建設・リフォーム業界に在籍。不動産業界にも精通。現在は、これまでの経験と知識を活かしつつAIを用いて業界の活性化に取り組んでいる。
