建設業の工事台帳の作り方|AIで明細と月次締めを整える
建設業の工事台帳を作るなら、工事ごとの一覧と、費用の根拠を残す明細を分けるところから始めます。工事一覧には契約や担当を置き、材料、外注、労務などの明細を工事番号で結びます。こうすると合計が変わったとき、どの明細が増え、誰が何を確認したかまでたどれます。
表計算でも運用できます。先に決めるのは、工事番号が分からない費用をどう保留するか、発注額と実績をいつ切り替えるか、締め後の訂正を誰が承認するかです。AIで請求書や納品書を読む場合も、この判断の流れを決めてから始めると、候補と確定値を区別できます。
工事番号を一つ決め、一覧と明細を結び付ける
同じ工事が、営業の表では建物名、現場の表では発注者名、経理の表では住所で登録されていると、名前だけで費用を集めるのは難しくなります。契約や社内の開始手続きに合わせて一つの工事番号を付け、発注、納品、請求の記録でも使います。名前が変わっても同じ工事を追えるよう、番号と表示名を別に持たせます。
工事一覧は一工事一行とし、工事番号、呼び名、担当、工期、契約や変更の参照先を置きます。費用明細は確認する単位で行を分け、同じ工事番号を入れます。追加工事を別工事で扱うか、同じ工事の区分で扱うかは、社内の集計と契約の扱いに合わせて決めます。似た工事名や取引先が多い場合は、工事と取引先の識別情報を整える方法から着手できます。
建設業振興基金の原価管理資料は、工事単位で費用を集計する考え方と工事台帳の例を説明しています。石川県の建設業サポートブックにも、契約金額、実行予算、費用の実績などをまとめる書式例があります。ここでは工事ごとの社内管理を対象とし、施工体制台帳や法令上の書類の作成方法とは分けて考えます。
費用の明細には、数字の根拠と確認の状態を残す
合計だけを記録すると、支払先や発注内容を調べるたびに別の帳票を探すことになります。明細には、金額に加えて、その数字がどの資料にあり、いつの分として、誰が確認したかを残します。
- 特定する情報。工事番号、取引先、資料番号、資料の日付、明細番号。
- 集計する情報。費目、金額、対象月、税を含むかどうかの区分。
- 確認に使う情報。発注書、納品書、請求書などの参照先、照合した担当、保留理由。
- 後から追う情報。確認した日時、訂正した日時、訂正前の行との関係。
一枚の請求書に複数工事の費用が載っていたら、工事別に分けられる明細だけを振り分けます。資料から分けられない費用は未確認の欄へ置き、誰がいつ判断するかを記録します。仮に均等割りして実績へ入れると、あとでどの工事の費用か説明しづらくなります。配賦する場合は、割り振り方を会社で決め、元資料との関係を残します。

発注額と確定実績は、同じ支出を二度足さない
発注が先で、納品や請求が後になる費用では、まだ確定していない額も経営上は知りたいものです。発注額、確認済み実績、発注残の見込みを別に表示します。費用がどこまで確定したか分かります。発注の全額を表示したまま確定実績も足すと、同じ費用が重なります。
説明用の例です。税抜の材料を合計12万円で発注し、そのうち5万円分を受領して経理の確認が済んだとします。単価も数量も変更がなければ、社内の管理表で、確認済み実績5万円、発注残7万円と示せます。費用の見通しはこの二つを合わせて12万円です。12万円の発注額に実績5万円を追加して17万円にしません。
値引きや返品があれば、発注残は単純な差し引きだけで決まりません。発注側の変更と、受領・請求側の資料を照らし、どの行を訂正したかを残します。どの時点で会計上の費用へ反映するかは、会社の経理処理に従います。照合の手順は、請求書と原資料の照合手順を使えます。
締めた月の数字を再現できるようにする
月の途中は、現場が受領した資料と経理が確認した資料が一致しないことがあります。締める前に、工事番号が空の行、同じ資料番号の重複候補、確認待ちの金額を一覧にします。該当する工事が分かった行だけを確定し、保留中の行は翌月の対応者へ引き継ぎます。
締め後に明細が届いたり、誤って別工事へ入れたことが分かったりしたら、旧値と新値、変更理由、承認者を残します。元の行を消すだけでは、先月の報告と今の表が違う理由を説明できません。いつの報告に反映するかは自社の締めルールに従い、当時の表示と現在の表示を区別します。
台帳で費用の根拠が追えるようになれば、契約金額と実行予算に照らして残りの費用を検討できます。ここから先の意思決定は、完成までの費用を予測する考え方へつながります。

AIで転記の候補を作り、人が工事番号を決める
請求書に工事番号が書かれていないときは、AIに書類から日付、取引先、摘要、金額を抜き出させ、元資料の箇所と一緒に表示できます。工事名が似ている、同じ取引先が複数現場に納品している場合は、候補のまま止めます。担当者が発注や納品の資料で確認した行だけを台帳に反映します。
合計、同じ資料番号の検出、必須項目の空欄検出は、表の条件や計算式で扱いやすい作業です。AIは表記が異なる資料から確認候補を作るところに使えます。金額の確定、費目や対象月の決定、締め後の訂正は担当者が行います。原価や個人情報を扱う前に、入力を認めた環境、保存期間、閲覧者を確認してください。
一工事・一締め月で、新旧の差を説明する
試すときは、一工事の一締め月を選び、現在の明細と新しい表で数字が合うかを確かめます。差があれば、工事違い、未確認、重複、締め月の違いなどに分けて理由を残します。作業時間だけでなく、締めまでに残った未確認行、明細へ戻るまでの手間、締め後に訂正した件数も確認します。
最初から全工事を移す必要はありません。月次の合計を一つ選び、どの資料と確認者に戻れるかを経理と現場でたどってみてください。戻れない箇所が多い場合は、先に工事番号の運用と保留欄を整えます。既存の台帳を使ったまま試したいときは、書式と締めの手順から相談できます。

約25年間、建設・リフォーム業界に在籍。不動産業界にも精通。現在は、これまでの経験と知識を活かしつつAIを用いて業界の活性化に取り組んでいる。
